はじめに 3歩先の経済学

「あの人は時代を先取りしすぎたね」
 というせりふを時々聞きます。歴史上の偉人だとガリレオやメンデル、ゴッホなどが挙げられます。これらの時代の先を行き過ぎてしまった人は、たいてい不遇な人生を送るはめに陥っています。それが転じて、夢を見すぎて足元がおろそかになってる人を揶揄する言葉にも使われるようになっています。
 逆に時代を先取りすることで成功を収めている人は「時代の半歩先を行くのがコツだよ」とおっしゃいます。一般大衆がついてこれる少し先の未来の姿を指し示すことが、世俗的な成功の鍵です。僕も世俗的な成功がほしいので、実生活では半歩先を歩くように心がけています。でも時々は3歩先の話を夢見てみるのもいいのではないかと思い、このブログを立ち上げました。
 半歩先を歩くためには一歩先の知識があると便利です。一歩先の知識は二歩先の世界を知っている人に教えてもらうとよいでしょう。そして二歩先を知るためには…きりがないです。
 こういった先を見ようとすると、えてして全然間違った世界が見えてしまいます。偶然に正しい未来が見えてしまった人だけが歴史に名を残すことになります。だから僕がここで語る3歩先の世界は丸っきりの嘘なのかもしれません。信じすぎないでください。でも多分正しいので、聞くだけ聞いてやってください。

 唐突ですが、僕は経済学が大好きです。
 3度の飯を2度に減らしてもいいかな、というくらいに好きです。
 なぜ好きかと聞かると、いろいろと理由は思いつきますが、最終的には好きなものは好きだからしょうがないと答えざるをえません。
「欲望には理由はない」
 これこそ経済学の原点です。経済学とはお金を扱う学問だと思ってる人も多いとは思いますが、最近の経済学ではお金とは無縁(に見える)の世界を経済学で解き明かしていこうという分野もさかんです。僕もそういった方向性の経済学が大好きです。でもたまにはお金の世界の話もするとは思います。
 経済学は大人の学問です。
 合理と不合理が渾然一体となっているのが特にすばらしい部分です。
 数学や物理学のように絶対の真理を追究する憧憬とも一線を画しているし、錬金術や(現時点での)心理学のようにすべてをケースバイケースとして追究を放棄する無責任さもありません。
 そういう大人の視点で社会や自分自身を拓いていきたいと考えています。
 ともすれば汚れなき子供のように純真な心を持った人には少し毒がきつすぎる文章を書くこともあるでしょうが、嫌わないでやってください。

 さて、経済学を実社会に応用するときの基本条件として「人間は万能ではない」「人間には有限な時間しか与えられていない」というものがあります。僕も人間なので当然このルールに縛られています。そのため僕は万能でもなければ無限の時間を有しているわけでもありません。
 何が言いたいのかと言えば言い訳を言いたいのでありますが、僕は完璧な理論を組み立てられない場合があるし、過去に議論された学説をすべて知っているわけでもないのです。特に知識の量は絶望的です。僕が得意げに語る新理論はすでに語られたことのある理論かもしれないし、根拠としている事実に間違いがあるかもしれません。しれませんどころか、多くあるでしょう。そういった僕の無能に気づいた人はできるだけ指摘してもらえるとありがたいです。参考文献なども教示していただけるとありがたいです。残念ながら有限の能力と時間(と資金)しか有していない僕はすべての参考文献に目を通すわけにはいかないでしょう。しかしできるだけ真摯に先人の知恵を吸収したいと考えています。
 基本的にはできるだけ平易な文章で各テーマを語っていくつもりですが、やっぱり経済学の基本知識がないとわかりにくい部分も出てくるかとは思います。参考文献も都度挙げていきたいと考えていますので、お金を出して買って読んでください。