安く売れ、高く買え 後編

移行期の混乱 商品の調達範囲の拡大期には調達範囲の拡大とプレミアムの付加のタイミングにギャップが発生する。プレミアムを付加するためには倫理の弱体化が必要だが、倫理を弱らせるためには「倫理が有効でなくなる状況」つまりは商品調達範囲の拡大が必要…

安く売れ、高く買え 中篇

ここからが本題というわけでもない 前説が長い。これは僕の悪癖だ。 前説が長い理由の一つは前述の解説停止をできるだけ避けたいと考えているからだ。何度も言うがこれは「3歩先の経済学」なので、「1歩先の世界」と「2歩先の世界」を解説しないと誰もつ…

安く売れ、高く買え 前編

このエントリーへのコメント用に書いていたのだが、あまりにも長いので自分のブログにエントリーすることにしました。 woodさんのエントリー自体はまあまああっていて経済学部の大学生くらいなら十分に合格点がもらえます。でももう少し進歩した解釈を紹介し…

ゆずれないものの交渉 その8

今日のまとめ 戦争の是非を問うのは難しいが、世界中のほとんどの人が全面核戦争だけはなんとか回避したいと願っていることは確かだろう。 戦争に関する交渉は最終的に全面核戦争という終着点が見えているために、誰もがどこかでチキンになることを選ぶ。 イ…

ゆずれないものの交渉 その7

今日のまとめ イラク戦争には「開戦するべき」「開戦するべきでない」の両方に十分な大義名分がある。 どっちにしても大量の死者が出る。 空想の兵器 捕鯨問題は前述のように現代の倫理を適用すれば「どうするべきか」の答えがはっきりと出る。もちろんその…

ゆずれないものの交渉 その6

今日のまとめ 生理的嫌悪を理由としていては捕鯨をやめさせることができないから、環境保護という大義名分を持ち出した。 大義名分を戦わせている裏でコスト競争も行われた。しかし倫理は金で買えないために双方がコスト度外視の行動をとった。 コスト度外視…

ゆずれないものの交渉 その5

今日のまとめ ようやく本題(ケーススタディー)のとっかかり。 基本的に誰もが自分のやりたいことをする自由を持っている。でも他人の自由はキモチワルイから制限したい。制限するためには正当な理由(正義)が必要だ。 正義は時代によって変化してきた。こ…

ゆずれないものの交渉 その4

今日のまとめ 倫理は対立する別の倫理を弾圧しようとする。しかしいろいろな方法でその弾圧に対抗することができる。その結果、倫理は「互いに弾圧しあわない」という倫理でもって停戦条約を結んだ。 しかし心の底では互いの倫理をキモチワルイと感じている…

ゆずれないものの交渉 その3

今日のまとめ 多くの古い倫理が失われているが、新しい倫理が増えていて、結局は倫理の総量は増えている。倫理は他者から押し付けられることが多いが、新しい倫理は人間の自由を奪ってでも押し付けられるべき正当な理由を持っている。 それでもやはり生理的…

ゆずれないものの交渉 その2

今日のまとめ 経済学の基礎にある概念の説明。 人はそれぞれ違った価値観を持っているが、経済学ではそれらの価値観の善悪を問うことはしない。というか善悪を判断するような機能を経済学は有していない。 だいたい人間の欲望は多様すぎてそれらを逐一判断す…

ゆずれないものの交渉 その1

序文とまとめ 交渉というものを経済学で解き明かそうとすると、いくつもの壁に突き当たります。もしも経済学がお金だけを扱うものだったとしたらこんな壁などあろうはずがありません。冷徹に計算を進め、交渉を行う前から結果が見えることになります。しかし…

高速道路無料化反対

今回も常識にチャレンジです。 高速道路無料化に反対です。woodさんが無料化反対という意見は信じられないと言ってるのですが、僕はどっちかというと無料化のほうが無邪気すぎると感じています。タダより高いものはないのです。 ちょっと長くなって読みづら…

食料自給率って上げなきゃならないの?

こちらで生徒(?)が落第したので模範答案を作成しました。 日本の食料自給率は低い。1億人もの人口を抱える巨大国家としては異例なほどに低い。それに関しては誰も異論を唱えたりしないだろう。しかし「安全保障のために食料自給率を100%に近づけるべ…

病院システム近代化計画Q&A その7

「更新の頻度が極端に落ちます」と宣言していたのですが、ここまで間を空けてしまうつもりではありませんでした。更新頻度が落ちる原因の一つは解消したのですが、まだ完全には片付いていません。当面、ひきつづき更新頻度が落ちることを予告しておきます。 …

病院システム近代化計画Q&A その6

すいません。少しやる気を喪失していたのとPCの調子が悪いのが重なってゆっくりになってしまいました。また、やる気とPC以外の個人的理由によって今後(数ヶ月程度?)更新頻度が大きく落ちると思いますので気長にお付き合いください。 まずは「Q&Aそ…

病院システム近代化計画Q&A その5

>「インフォームドコンセント医師の仕事は極端に簡単」というのは、何をどう言っていいのかわからないほど間違っています。診療医師と同じかそれ以上の技量が必要です。 きっとここが議論の大きなターニングポイントになります。 この議論は経済学では労働…

病院システム近代化計画Q&A その4

前回のエントリーに関しては内容に関して双方が合意できなければ議論の意味がないと書きましたが、今回は逆に偶然以外の理由では合意できるわけがない内容になっています。その理由は僕が医療現場に関する知識がないことです。そしてNATROMさんも程度の違い…

病院システム近代化計画Q&A その3

前回、途中で根性が切れて変なところで中断してしまいました。「Q&Aその2」の改革は現場と一緒にやっていこうという話の続きです。 さて、改革を現場と一緒にやっていこうと言っても、現場は誰と一緒にやればいいのかを僕はまだ明示していませんでした。…

病院システム近代化計画Q&A その2

NATROMさんのコメントへの返答です。 返答がかなり長くなっていますが、「読む気をなくさせる大量の文章を提示して煙に巻く」を意図しているわけではありません。長くなるのは以下の3つの理由によるものです。 1.共通の知識的基盤が小さい 2.簡潔に説明…

病院システム近代化計画Q&A その1

ちょっとのんびりしてしまいました。 タイトルは「Q&A」となってますが、正確に表現するならば「コメント返答集」とするべきでしょう。Q&Aとしてるのは単にタイトルがあまり長いのもどうなんだろう?という気持ちからきています。Q&Aなんて書くと「…

病院システム近代化計画目次

シリーズ終了後に目次をつけるのはなんだか変な気分ですが、分かりやすいように目次を作成しておきます。 このシリーズはもともと病院での待ち時間の表示があまりにも不親切だというネタが発端です。それの解説だけを見たい方は「その6」「その7」へ飛んで…

病院システム近代化計画 その11

前近代の保護 我々は近代社会を生きているが、それでも我々のすべては前近代的なものを完全に排除して生きていけるわけではない。それぞれの職業にはそれぞれの職業に特有の名誉があり、ノーブレス・オブリージュがある。 僕はこのシリーズにおいて医者に近…

病院システム近代化計画 その10

二桁いっちゃいました。このままいくと病院システムの専門家になってしまいそうです。 ホウレンソウを減らせ*1 水平にしろ垂直にしろ分業のボトルネックは常にコミュニケーションにある。一つの仕事を複数の人間で行うために、何をしているか、どれだけ進ん…

病院システム近代化計画 その9

顧客満足度向上計画 「ちょっとお願いが...」 「はい、担当者に代わりますね」 担当者制度を厳格に適用するとこのようなやり取りが増える。その場で相談した人に対応してもらうことに比べると顧客満足は低下する。客は「的確に対応してもらい結果的に早く解…

病院システム近代化計画 その8

ここからは理想論です。法律上実施困難なことも書きます。 法律上無理なことを要求するということは法律を変えるべきだという提言でもあります。しかし法律を変えると非常に複雑な問題が発生します。法律は基本的には必要だから国会で審議されて作り出されま…

病院システム近代化計画 その7

どこまで続くんだよ。勘弁してくれよ。と泣き言を言いたいのですが、佳境に入ってきました。もう引き返せません。「毒を食らわば皿まで」です。 しかしこの状態は「読む気をなくさせる大量の文章を提示して煙に巻く」戦術になりつつあります。少々不誠実な態…

病院システム近代化計画 その6

最初にすごく馬鹿っぽい告白をします。昨日までのその1からその5を読まなくても、今日のエントリーだけ読めば*1とりあえず待ち時間に関する問題のひとつの解決方法はつかめます。はっきり言ってたいしたことないです。 しかし僕は今日のエントリーを書くた…

病院システム近代化計画 その5

「病院の待ち時間を減らすために」で僕は医者をトリアージ医師・診療医師・電子カルテ医師・インフォームドコンセント医師に分業させることを提言した。これらの医師がABCD4の5種類の患者にどのように対処していくかの業務フローを見たいきたいと思う。…

病院システム近代化計画 その4

何度も書いているがこれは経済学です。いや、すでに経営学の世界に入りつつあるのかも。僕は経済学部経営学科を卒業してるからどちらも専門家ですが、経済学と経営学をどこで切り分ければいいかよく分かりません。しかしこの話が医学ではないことはほぼ確か…

病院システム近代化計画 その3

前近代の後に近代が来た 医者という共同体は確かに不思議な進化形態を持っている。その形態の一部は古きよき時代を現代に伝えるものであるが、残念ながら現代の道徳基準では悪と認定されるような性質も有している。これはひとえに医者に限った現象ではない。…