不思議な韓国

うーん。ドクトリンの説明などしていたら長くなりすぎた。


朝鮮半島の時事ネタと言えば北朝鮮の暴走が最初に頭に浮かぶが、ここではあえて韓国の迷走ぶりを考察したい。いや、あえてと言うよりも現時点では北朝鮮よりも韓国のほうが不思議な行動をとっているのが気になって仕方がないのである。
韓国の不思議な行動を数え上げるときりがない*1。もちろんどの国にだって不思議な、正気を疑いたくなるような行動はある。中国、ロシアは言うに及ばず日本もアメリ*2もおかしな行動をとることがままある。人間誰しも間違いはあるのだが、本来正常な国家では間違った政策を事前に防ぐチェック機能が存在し、実際にその政策が実行されることは少ない。さらに実行中にもおかしなことがないかとチェックされている。独裁国家ならばこのチェック機能が正常動作しないことも考えられるが、韓国はれっきとした民主主義国家なのだ。
盧武鉉大統領の北朝鮮政策がまさにそれである。詳しくは新聞報道等で調べて欲しいが、基本的には「人民軍と将軍様の懐にしか入らないのを知っていて多額の援助資金を出す」「北朝鮮の敵である日米を毛嫌いする」「その結果、韓国への北朝鮮の軍事脅威が増す」という状態だ。北朝鮮に買収されているんじゃないだろうか*3と感じるくらいである。なんだか盧武鉉大統領は「どうせ次の選挙には勝てるわけがないんだし、レームダックと言われようが大統領の地位にしがみついて、今のうちにできるだけ将軍様に貢物を送っちゃおう」と考えてるとしか思えない。
しかし真の問題は盧武鉉大統領にあるのではない。彼を辞任させたり、せめて政策や発言を抑制させるチェック機能はないのだろうか。多くの国民(少なくとも半数程度)が彼の親北政策は間違っていると感じており、韓国と重要な関係にある国(具体的には日米)も同じように考えている。
韓国はなんとしても政治のチェック機能を動作するものへと整備しなければならない。そうしなければ、この下で僕が述べている韓国の国家政策案も絵に描いたもちに過ぎなくなってしまう(どっちにしろ韓国の参政権を持たない僕が書く文章は絵に描いたもちに過ぎないのは確かなのだが)。


政策とは手段である。手段は目的を達成するためにある。ならば目的をはっきりさせることがするべき行動をはっきりとさせることにつながる。目的はずばり韓国の国益である。本当は周辺諸国(もっと言うと日本)への貢献も目的に入れて欲しいが、これは韓国の話なので韓国の国益が至上目的である。もしも周辺諸国への貢献が韓国の国益に貢献するのであれば、それを手段として取り入れればいいだけのことだ。
極言すれば、国益は自国民の安全と豊かな生活、自国民の尊厳の向上、国家理念の遂行の三つに集約されるだろう。しかし韓国は特殊な国で冷戦の影響で北朝鮮と韓国の二つに国土を分断されてしまっている。そのため自国民を定義することが難しくなっている。
この国民の定義が曖昧なことが韓国の迷走の一因になっているのだが、韓国国民の意識の最大公約数としては、第一に韓国領土内の朝鮮人、第二が北朝鮮領土内の朝鮮人のようである。不思議なことに海外に住む朝鮮人は自国民として意識されていないようである*4。ここでその意識の是非を問うわけにはいかないが、この定義の仕方によって大きく国益の方向が変化するので、場合分けして議論を進めたい。
国家理念がはっきりしていないというのも韓国の国益が明確にならない原因となっている。大日本帝国にとっては国体(天皇制)の護持が重要な国益であった。アメリカ合衆国だと自由と民主主義だろうか。現代の日本国だと世界平和の実現が国家の理念となっている。しかし国家理念はここまではっきりしていないのが普通だし、国民の価値観が変われば理念も変化してしまう。
また、なかなか大きな声で言うことができない理念もある。フランスの理念は「世界一自由でかっこいい国」であるが、こんな理念を大きな声で言うのは難しい*5
韓国の大きな声で言えない理念は「日本を弟分として従えたい」ではないだろうか。しかしこれは「華夷秩序の中での正しい朝鮮の立ち位置の実現」とセットにしなければならない思想である。そうすると日本に対しては兄貴面ができても中国からは子分扱いされなければならなくなる。これを大きな声で言ってしまうと日本からは嫌がられるし、中国からはなめられてしまう。また世界は中華帝国の版図*6だけではない。そのほかの地域の国々からは井戸の中の蛙のように見られてしまうだろう。
ここで理念まで変化させるべきだと言い出すとルール違反のきらいがあるが、やはり理念を「東アジアの中でリーダーと見なされる国になる」に軌道修正するべきだろう。この程度の軌道修正ならば韓国国民の感情とも一致するのではないだろうか。


さてこの目的を達成するために中間目標を立ててみよう。実は韓国の行動がおかしくなる原因は、この中間目標が複数の互いに大きく矛盾するものであることにある。
・経済繁栄戦略
中間目標:韓国の経済を日本を凌駕するほどに発展させる。
利点:自国民の生活の向上に繋がる。自分をごまかすことなく自尊心を満足させられる。国際社会の主流派である日米からの協力が期待できる。
欠点:経済発展の過程で必然的に日本経済の発展に貢献してしまう。国土面積や人口の差が大きいので日本を超えることはほぼ不可能である。お荷物である北朝鮮の自国民を切り捨てなければならない
・虚栄心戦略
中間目標:日本の評判を下落させ、相対的に日本の上位に立つ。
利点:安上がりに実行できる。自国の発展荒廃とは関係なしに日本が困るのを見るのは楽しい。北朝鮮地域の自国民の救済とは大きくは矛盾しない。
欠点:日本経済が風邪をひくと韓国経済は肺炎になる。日本はかなり品行方正な国なので、多くの情報を改竄・捏造しなければならず、我に返ったときにむなしくなる。本格的に日本が情報戦で反撃してきたときに勝てない。
・南北統一戦略
中間目標;とにかく南北朝鮮を統一することに全力を挙げる。
利点:明らかに国民の福祉の総量が大幅に向上する。国際社会(特に日本*7)からの援助が期待できる。
欠点:戦争が発生する可能性がある(南北全面戦争が発生すればすべては台無しである)。多額の資金を拠出するため韓国地域の国民の福祉は大きく損なわれる。中国が(戦争という手段も含めて)大きな嫌がらせをしてくる。


さらにこれらの戦略すべてに、どの国と同盟を結ぶかという選択が出てくる。
・日米との同盟
利点:経済・人道の目的において最高のパートナーである。またアメリカは軍事的にも世界最強であるため、戦争の危険は非常に小さくなるし、たとえ戦争が起きても勝ち組になれる。
欠点:嫌いな日本と同盟*8しなければならない。日本抜きでアメリカとだけ同盟したくても、アメリカは絶対に日本との同盟を捨てることはないだろう。アメリカ側のリップサービスだけでなく、日米同盟は現在の世界において何者も比肩し得ないほどに重要な同盟*9である。
・中国と同盟する
利点:歴史的に韓国は中華帝国の版図の優等生だったため、違和感がない。中国から見ると韓国は利用価値が大きいため本気で同盟関係を維持してくれる。同じく中国と同盟(というよりかは属国化)している北朝鮮との統一が可能。
欠点:属国扱いされてしまう。いったん同盟してしまうと抜けさせてもらえない。北朝鮮と統一した場合、朝鮮半島全土が北朝鮮化してしまう。軍事以外のメリットが小さい。
・ロシアと同盟する
利点:中国との同盟ほどは国土の荒廃が少なくてすむ。ロシアの大きな核の傘に入ることで、他国からの干渉を大きく排除できる。ロシアは資源大国なのでその面での心配がない。
欠点:ロシアは確実に基地の設置を要求してくる。在外米軍と比べるとロシア駐留軍のモラルは悪く、トラブルは必至である。最悪の場合、原潜などの大事故が起き、大規模な放射能汚染が発生する。中国ほど露骨ではないが属国扱いされる。日米からの経済制裁が行われ*10、ロシアも先端技術を提供しないために技術レベルが大きく落ち込む。
・英連邦に加入する
利点:英連邦は世界の先進国グループに属するために、経済面での制裁は行われない。英連邦の盟主、イギリスはそれなりに信頼の置ける国である。
欠点:歴史的な経緯がない*11ために同盟結成には大きな外交努力と幸運が必要である。英連邦の軍事力は米露中と比べると小さく、その大部分が地球の裏側のイギリスに集中しているため、有事の際の戦力としてどころか抑止力としても機能するかどうか不安である。国際関係が複雑になりすぎるために朝鮮半島統一はほぼ不可能になる。
イスラムと同盟する
利点:国際関係が異常に複雑になりすぎて、誰も韓国に手出しをできなくなる。
欠点:イスラム諸国はあまりにばらばらすぎてどこが本当の同盟国か分からなくなる。さらにイスラム諸国内のごたごたに巻き込まれる恐れもある。中露と組んだときほどではないが経済制裁が行われる。そもそも国民をイスラムに改宗させることが無理。下手をすれば内戦が勃発する。
ASEANと同盟する
利点:地政学上、違和感が小さい。中国の牽制に役立つ。経済上のデメリットが小さい。
欠点:ASEANの軍事力は小さく、英連邦以上に役に立たない。もともとASEANは経済上のゆるやかな連合(同盟ではない)で、軍事的には対中牽制程度にしか統一されていない。対中牽制も米軍の影響力の下で成立できているだけである。もしASEAN同盟がありえても盟主はインドネシアになる可能性が高い。よしんば韓国が同盟の盟主になることを主張しても、ASEAN内の対韓感情は悪く*12、それを覆すほど*13は力を持っていないために同盟は成立しないだろう。
・どことも同盟せずに中立外交を貫く
利点:独自外交ということは、小さいながらもお山の大将になれるということであり、国民のプライドを大幅に向上させる。理論上はどんな政策の実施も可能になる。
欠点:どことも同盟しないということはどこからも守ってもらえないということである。地政学上、韓国には非武装中立という選択肢は存在せず*14武装中立には気が遠くなるほどの出費が必要となる*15。特に中露は朝鮮半島の属国化に大きな利益を感じており、この二国が共謀して韓国を侵略した場合は、米国は同盟国という旗印がない限り守りきることはできないだろう。


中間目標・同盟相手を決定した上で、その戦場で戦うための武器を選択しなければならない。この武器がドクトリンと呼ばれるものだ。
ドクトリンは日本語では「教義」「政策」と訳されている。ドクトリンは少しとっつきの悪い概念だが、例を見てみることで理解してもらえるだろう。
近代世界において大きな影響を与えたドクトリンに「モンロードクトリン(モンロー主義)」「冷戦ドクトリン」がある。モンロードクトリンは19世紀から20世紀にかけてアメリカ合衆国が採用したドクトリンだ。南北アメリカの利権へのヨーロッパ諸国の干渉を許さない代わりにアメリカ合衆国もそのほかの地域へ干渉しないという政策だった。これにより合衆国は比較的近距離にある半植民地の開発に注力することができるようになり、巨大な経済力を有することになった。
経済力という先立つものを手に入れた合衆国は満を持して、第一次世界大戦戦勝国が軒並み採用したブロック経済ドクトリンに乗り換えた。そのブロック経済ドクトリンの負け組である日独伊が引き起こした*16第二次世界大戦によって、戦勝国側も経済的に大きな損害を被り、ブロック経済ドクトリンは放棄された。合衆国としてはその後の世界で自由貿易ドクトリンを本格的に採用したかったのだが、ソ連という行儀の悪い国が世界中で戦争と暴力革命を引き起こした*17ので、冷戦ドクトリンで対抗することになった。
冷戦ドクトリンの根幹は世界を西側と東側に分け、西側で実現した技術進歩と経済発展を東側に分け与えないというもの*18である。そして分断された西側では自由貿易ドクトリンが、東側では計画経済ドクトリンが採用され、それぞれ独自に社会を運営したが自由貿易ドクトリンのほうが優れた武器であったために西側が経済的に東側を大きく引き離した。
冷戦の最終ステージでは、西側は軍拡競争ドクトリンを決戦兵器として採用した。これは相手の(そして自分のものも)経済力をすべて軍事力につぎ込ませ、経済力が弱い側が必然的に負けるという作戦だ。実際の戦争(ホットウォー)だと運不運で戦争の結果が左右される危険があるし、なにより現代のホットウォーにつきものの大量の人命損失という負担がない合理的なドクトリンだった。
冷戦ドクトリンには、「負け組は降参すれば勝ち組連合に加えてあげますよ」というドクトリンが含まれていたため、全面核戦争は回避された。もしそれまでのブロック経済ドクトリンのように「負け組は植民地支配してやるぜ」というドクトリンだったならば、それまでのように負け組は「もしかしたら勝てるかもしれない。負けても、戦争しなくてもどっちにしろ植民地支配されてしまうんだし」と全面戦争ドクトリンを採用するしかなかったのだ。
このようにドクトリンは実際の軍事力や経済力以上に国家の将来を大きく変える力を持っている。そしてそのドクトリンは自分や戦う相手の状況に応じて選択されなければならない。相手の採用したドクトリンに合わせて、さらに自分の目的に合わせて臨機応変にドクトリンを変化させなければ勝ち続けることはできない。
このようにドクトリンの本質を理解した上でこれまで韓国の、そして周辺国の採用したドクトリンを見てみよう。


・近所の親戚ドクトリン
朝鮮戦争の)戦後から1980年の民主化まで韓国は日本に対してこのドクトリンを採用していた。近所に住んでいる親戚は何かとうるさい存在である。その親戚の性格が悪かったりしたらなおさらだ。かといって縁を切るわけにもいかず、引越しをすることもできない。
特に資金や技術を日本から無心していた。困っている親戚を助けるのは人としての義務だろうという論法だ。素直に出す日本も少し間抜け顔だが、後述する品行方正ドクトリンを採用している日本にとっては、国益にかなう行為だった。
・アジアの組立工場ドクトリン
盧泰愚から金泳三の時代、経済成長した韓国は困っている親戚のふりをして日本から援助を引き出すことは無理になっていた。逆に言うと自力で成長するだけの力を身につけたと言える。NIESと呼ばれ、日米の市場を中心に世界中に工業製品を売りまくった。
しかし心臓部品を作る技術力がないため売上ほどは利益が出なかったのも事実である。しかし政府統計は単式簿記で作られるため*19、この事実はなかなか表面化しなかったが、表面化したとたんに国際収支が破綻しIMF事件に繋がった。
・アジアのバランサードクトリン?
念願のOECD加盟を果たした韓国は、経済成長を主目的とした組立工場ドクトリンを放棄した。ドクトリンを放棄したところで産業がレベルアップするわけではない。逆に組立工場としての仕事をもらうための政策の一部を放棄したために産業の潜在能力は低下している。
ドクトリンの名前に?をつけたのは、このドクトリンを構成する政策がドクトリンの目的にそぐわないものが多すぎるためだ。それを評して「迷走する韓国」と呼んでいるのだが、少し行数を多めに割いて説明したい。
バランサードクトリンの目的は「日本のように世界の極として認められたい」である。とは言っても一足飛びに大国になれるわけではない。そこで考え出されたのがこのドクトリンだが、悪い言い方をすると「こうもりのように米露中の間を飛びまわって、どこからも「うちにおいでよ」と誘われたい」となる。しかし冷戦は終わっており、アメリカは「日本が同盟国でいてくれさえすればそれで満足」、中露は「軍事技術が発達したから日本に侵略するときに前線基地としての朝鮮半島を必要としない*20」となっており、みんなに誘ってもらうどころか誰からも相手にされないという状態になってしまった。
そんな状況でバランサーになるためには、「これだけは負けない!」という産業分野を作って韓国のブランド力を高めることが王道だろう。韓国が目をつけたのが、アニメ・映画産業である。膨大な国家予算をつぎ込んで産業の育成を図っており、たしかにこれらの質は向上している。しかし、アニメで日本に、映画でアメリカに勝つのは難しいだろう。また、この産業には直接的な政治・軍事上の力はなく、この産業をめぐっての国際的な綱引きが行われるとは考えにくい。ちなみに日本は軽薄短小技術では世界の追随を許さないブランド力を持っている。
なんとしても政治・軍事で世界の注目を集めたい韓国は禁断の手法をとることになった。北朝鮮と仲良くし、注目してくれなければもっともっと仲良くするぞと世界を脅迫するのである。つまりは瀬戸際外交ドクトリンだ。
実は北朝鮮の取っている瀬戸際外交は不完全である。北朝鮮の核ミサイルはほぼ確実に発射準備中に米軍の攻撃を受けて地上で迎撃されるはめになるだろう。よしんば迎撃される前に発射することができたとしても、慌てて発射したミサイルに目標に命中するだけの精度を与えることは不可能だ。そのように決定力を欠いた北朝鮮はさらに、相手が折れるまで待つという持久力すら持っていない。いつ国家が崩壊してもおかしくないと言う状況で根競べをすると必ず負けるということは、冷戦ドクトリンで証明されている。
しかし韓国の瀬戸際外交は完璧である。もしも北朝鮮の核およびミサイル技術と韓国の包括的な工業技術が組み合わさったならば、相手を脅迫することが可能な軍事力が出来上がるだろう。問題は北朝鮮の国家的な持久力がないことだが、これも現在行っているように生かさず殺さずの援助を行えば、当面の延命は可能である。
しかも朝鮮人に多く見られる現実を直視しない性癖*21が瀬戸際の信憑性を増すことに役立っている。たいていの国家なら北朝鮮のような地獄に国民を巻き込むわけがないと安心して瀬戸際の演技を見ていられるが、韓国の場合は本気なのかもしれないとはらはらしてしまう。
瀬戸際外交は、相手が容認できない事態の寸前に身を置き、自分の要求を通すことを目的としているのだが、韓国の要求内容は「世界の皆さん、私に注目してください」だ。たしかに世界中は韓国の迷走ぶりに注目した。しかし世界の注目を維持するためには瀬戸際から離れるわけにいかない。さらに世界がその状態に慣れてくると、次の注目を手に入れるためにはもっと瀬戸際に足を踏み出さなければならない。世界は韓国を注目してやることはできるが、瀬戸際から救い出すことはできない。
この何をしたいのかよく分からないドクトリンを採用することになったきっかけは、最終目標である「東アジアのリーダーになりたい」を達成しようと考えたことなのだろう。「リーダーになるにはリーダーの属性を身につければいい*22」となり、リーダーの属性のひとつである「世界の極となる」を得るために瀬戸際外交を使用することになった。この錯誤は中間目標を設定しなかったことから発生している。最終目的を実現させるための正しい手順を踏まなかったために途中で手段が目的化してしまったのだ。
・品行方正ドクトリン
これは戦後の日本が20世紀の終わりまで使用したドクトリンだ。
「絶対に人を傷つけたりだましたりしない」という態度を貫き、日本の国際的評判を高めることを目的としている。日本は貿易立国であり、世界中から資源を買い集め、世界中に製品を販売している。悪評が立つことはこれらの活動を困難にするし、なによりも交際相手が多すぎるので相手に合わせて態度を変えることにコストがかかりすぎる。それならば局所的な効率の悪さに我慢して、トータルで利益をあげられればいいと考えたのだ。
また、援助を与えた相手が経済的に発展すれば、それが日本の繁栄にも貢献するという狙いもあった。まさに「情けは人のためならず」だ。
WTOドクトリン
しかし世界中に富や高度技術が蓄積されるとそれをテロや独裁体制の維持に悪用する主体が増えてきた。品行方正ドクトリンはすべての国と分け隔てなく仲良くすることが重要なドクトリンだったが、テロ国家などと仲良くすることは日本の求めている「安全で豊かな世界」を遠ざけてしまうことになる。
WTOドクトリンはWTOに代表される、国際社会を律するルールを守る国と仲良くするドクトリンだ。人権を軽視したり、理不尽な言いがかりをつける国とは原理原則論で対抗し、それらの国が態度を改めれば何事もなかったかのように仲良くしますという戦略である。原理原則を貫くことは品行方正ドクトリンの持っていたトータルコスト重視の継承である。
・地上の楽園ドクトリン
朝鮮戦争で軍事的な南北統一に決着がつけられなかった北朝鮮が、次なる戦いの武器として作り上げたドクトリンである。
北朝鮮共産主義に基く地上の楽園だと宣伝し、多くの支援者を獲得することを目的としていた。狙っている支援者とは韓国や日本に住む朝鮮人である。彼らが北朝鮮の幻想を信じて、自分の住んでいる国を北朝鮮のように共産化させることを狙ったのだ。
韓国は徹底した反共教育でこれに対抗したが、このドクトリンに洗脳された人間が大統領に選ばれてしまうなど、大きな戦果をあげられてしまった。日本においても朝鮮人以外に日本人も多く洗脳されてしまい日本の外交活動をゆがめることに成功している。
このドクトリンは「多人数が関る重大情報は絶対に隠蔽できない」という原則によって終焉を迎えざるを得なくなった。


長々と政策決定の原則を紹介してきたが、ようやく本題の韓国の目指すべき戦略に移りたい。
まず最終目標である国益の内容だが、自国民の範疇に韓国支配地域以外に住む朝鮮人を含むかどうかで大きく戦略が変化する。個人的には含むことにして欲しいと切に願うのだが、他人の欲望の是非に口を挟むわけにはいかないので、ここでは含む場合と含まない場合の二つに分けて論じたい。
最初にすべての朝鮮人を自国民と見なすという場合について考えてみよう。この場合には南北統一戦略が一番の近道だが、現実的にはこれを選択するわけにはいかない。第一に性急な統一志向は戦争を引き起こす危険性が高すぎることだ。戦争が起きれば自国民の幸福は大幅に減少し、すべては台無しである。第二はたとえ戦争を回避して統一ができたとしても、現在の韓国の経済的な体力を考えると韓国地域に住む自国民の負担が大きすぎて有権者の支持が得られなくなってしまう。民主主義国家はたとえ崇高な目的があったとしても有権者の同意なしには政策を実行するべきではない。
そうなると採り得る戦略は経済繁栄戦略しかない。南北統一に耐えられる経済的な体力を身につけるのだ。経済繁栄戦略の欠点として南北統一が難しいことを挙げたが、長期的かつ段階的に準備すれば有権者の賛同も得られるだろう。ドイツの東西統一の混乱は、前触れもなく統一してしまったことと、手本となるケースが存在しなかったことにある。韓国はドイツよりもうまくできる可能性は十分にある。
経済繁栄戦略を採った時の同盟相手は日米しか考えられない。単なる経済繁栄だけではない。日米との相互依存関係を構築しておくことで、南北統一時の援助が期待できるようになる。絶対に他の選択肢は存在しないのだ。それならば日米との同盟戦略における欠点を克服するドクトリンを用意するしかない。
日米との同盟の最大の欠点は世界でもっとも嫌いな国、つまり日本と同盟しなければならないと言う点に尽きる。これは大統領の個人的な感情の問題ではない。韓国の有権者の総意の問題だ。何度も言うが有権者を無視して政治を進めてはならない。
また長々と説明をするはめになるのだが、韓国における反日感情を分析しなければこの問題の解決方法は見つからない。
基本的に人間は誰しも祖先の悪い業績は聞きたくないという感情がある。祖先が何をしでかそうが、自分は自分なのだから関係ないという理屈は通用しない。いやだからいやなのだ。しかし、たとえどんないやな祖先であっても自分が自分であることは変えられない。だから必ずどこかで妥協しなければならない。
朝鮮の祖先の悪い業績は、いい業績がほとんどないという部分にある。いい業績が多数あればそれを糧に祖先を敬うことができるが、それがないことはとても大きな喪失感を生み出すらしい。例えばアメリカ合衆国は建国してからまだ300年の歴史しかないが、これは彼らにとってのコンプレックスだそうだ。建国神話がないからファンタジー文学がアメリカで盛んになったと言う学者もいる。
朝鮮の祖先がいい業績を残せなかったことには二つの理由がある。一つ目は先年以上の長きにわたって中華帝国の属国であり続けたことだった。これだけ長期間、間断なく属国として扱われた国は多分、朝鮮だけである。朝鮮は巨大な力を持った中華帝国のすぐ隣にあったから仕方がないことだ。しかも支配から逃げ出そうにもそこは半島であり、逃げ場がまったくなかった。モンゴルやウイグルベトナムなどは中華帝国の大軍が攻めてきたときに、少しの間遠くへ逃げ出すという戦術が使えたために属国化を免れることができたこともある。
二つ目は、朝鮮の王朝がしばしば前王朝の記録や構築物を壊していたことだ。中華文明圏の中心に近いところに位置していた国である。いい業績がまったくないということは常識的に考えられないことだ。しかし、その実績を後世に遺すものがなければ自慢したくても自慢できない。
文明の光がなかなか届かなかった地域、例えばニューギニアならば、いい業績の記録が残されていないことにも言い訳が立つだろう。しかし、世界の最先端の文明地域に属しているにもかかわらず、業績の記録が少ないことには言い訳ができない。すぐ隣の中国や日本には驚くほど多くの記録が残されているのだ。
次に近年にもいい業績がないことも問題だ。日本は自力で独立を維持し、文明開化を成し遂げた。中国は紆余曲折はあったにしろ、核兵器の力でもって世界の大国の地位を保持している。朝鮮は日本の指導の下でしか文明開化を行えなかった。
冷静に考えれば、欧米の列強がやってきた時代が悪かったとも言える。19世紀後半の李氏朝鮮が腐敗しきっていた時期だったからだ。どの国だって調子が悪い時期というものはある。もし列強の進出が百年遅ければ、朝鮮は自力で腐敗した李氏王朝を倒し、文明開化を断行できる政体になっていたかもしれない。
これは全部言い訳だ。朝鮮には日本や中国に匹敵できる歴史遺産がないという事実だけが現実だ。しかし朝鮮人の性癖には現実を直視しないというものがある。その性癖によって「朝鮮は自力で文明開化をしたが、日帝によってさらなる成長を妨げられた」という捏造歴史が作り出された。
そして捏造された歴史をもって教育された子供たちは正しい知識を持たずに日本を嫌いになってしまう。その子供たちが大人になって彼らの子供たちを教育する。そのうち誰も真実が分からなくなる。そんな連鎖反応が韓国で起きた結果が現在の反日感情である。
こういった捏造された歴史に基く感情は、外部からの知識の移入によって修正され、あまり理不尽なものにならないのが普通である。たとえ真実の歴史であっても、昔の彼らと今の彼らでは違うということが分かって、感情は薄められていくことが多い*23
だが韓国は戦後、言論弾圧を行い、日本の文化移入を禁止した。公に語られている歴史が捏造だと指摘することは現在の韓国でも命の危険を感じるほどだそうだ。そして現在の品行方正な日本を知ろうにも、日本語の文化は輸入を禁止されており、感情を薄めることができなかった。
今の韓国はこの歴史捏造のメッキがはがれつつあり、混乱している。この混乱を道徳的退廃ととらえた人々が不必要に大声で反日を唱えている状態ではないだろうか。ほうっておいても後50年ほどして、世代が完全に交代すれば現在のようなヒステリックな反日運動はなくなってしまうだろう。
しかしそれでは遅すぎるのだ。韓国は経済繁栄戦略を実行するためには、今すぐにでも反日運動を沈静化させなければならない。脚注で述べているが、韓国が親日国家にならない限り、日本はこのデメリットの大きい同盟関係を結ぼうとはしない。
反日運動を沈静化させるには二つのアプローチが必要だ。一つ目は反日運動という火に燃料を供給する行為を止めることだ。具体的には公機関による捏造歴史の流布を停止することと、言論の自由を強くサポートすることだ。しかし、いくら親日感情をできるだけ早く醸成したいと思っても、当面は捏造歴史の非を国家が公に表明するべきではないだろう。先述したように有権者は祖先や自国の悪い業績を聞きたくないと思っているからだ。もしそんなことをして政権が失脚したら、次に来る政権は反動的に反日を推進するものになるだろう。
言論の自由も大切だ。言論の自由さえ保障されれば、あきらかにおかしな証拠に基いている捏造歴史は淘汰されていく。現在の韓国にも捏造歴史を指摘する歴史家はいるのだが、言論の自由が保障されればもっと多数の歴史家が正しい歴史を研究することになるだろう。
反日運動の沈静化とは関係なしに言論の自由は日米韓同盟の条件となるだろう。日米は共通の理念として人権を掲げており、言論の自由は人権のかなり基本的な部分に位置するものだからだ。
二つ目のアプローチは、自国民の自尊心を満足させるものを用意することだ。朝鮮人は自国の歴史が自分の自尊心を満足させてくれないから、歴史を捏造し、他者を叩いてその欲望を満たすのだ。もしも自国民の自尊心を満足させるものが用意できないまま反日運動だけを押さえ込んだとしたら、その欲望のはけ口は別のものを叩くことに向けられてしまうだろう。日本のWTOドクトリンは、たとえ自分に向かってくるものではなかったとしても野放図に撒き散らされる負の感情を許容しないだろう。
一人当たりGDPを日本に匹敵するものに押し上げることがこの問題の解決方法ではないだろうか。もちろん完全に同じにまでする必要はない。80%くらいまで追いつけば十分に自尊心は満たされるだろう。そして日米韓同盟を結成した後に改めて日本を抜くことを目標にすればいい。これは口で言うほど簡単な目標ではないが、人口の少ない韓国だからこそできる可能性があるのだ。
ただしここで目標を見失ってはいけない。「一人当たりGDPを高めるためには北朝鮮の貧乏人を国民に加えるわけにはいかない」などと考えてはいけない。あくまでもこの戦略はいかに南北を統一させるかという目標によって策定されているものだからだ。親日も経済繁栄もすべては方便なのだ。
こうして戦略を立ててみると、これは品行方正ドクトリンの亜流であることが分かる。どう亜流かと言うと、本気で品行方正になる相手は日本とアメリカに対してだけだからだ。そしてこの場合に日米同盟が要求してくるWTOドクトリンも品行方正ドクトリンの影響を強く受けたドクトリンである。つまりは韓国は品行方正にならなければならないということだ。しかし韓国の行儀の悪さはアジアでは有名である。この韓国版品行方正ドクトリンは実施には大きな精神的努力が必要とされるだろう。
こうやって経済的には北朝鮮を迎え入れることが可能になった。次は政治的・軍事的な条件をクリアーしなければならない。しかしこの戦略策定は非常に難しい。なぜならば北朝鮮は暴走状態で「こういう外的要因ではこのように行動するのが一番彼らの利益になるからそのように行動するだろう」という予測を立てられないのだ。また、独裁政権の特徴としてトップの健康状態が大きな政策変動要因になるということも挙げられる。
しかし、自分が用意できる戦略は限られているのでそちらから見ていこう。日米と同盟した場合、絶対に金正日とは宥和できないということだ。金正日は南北統一の解決法として連邦制を要求してくるかもしれないが、これを受諾することは日本が許さないだろう。日本に原爆を投下したルメイ将軍でさえ許して最終的に勲章まで贈った日本だが、戦勝国としての立場を取れるのだとしたら絶対に金正日は許さない*24。日本が彼に許すことは死刑か亡命かを選択することだけだ。
金正日と宥和できないことは、北朝鮮を段階的に統一していくという戦略の決定的な阻害要因になる。段階的な統一は、北朝鮮がある程度強固な政権を保持しているということが条件になるからだ。その強固な政権の下で改革を進め、最終的な統一を目指すのだが、どのような政治であっても保守派は必ずいるものだ。既得権益を所持した人間は改革への抵抗を試みるだろう。金正日が亡命、死去もしくは処刑された後の政権がそのような改革への熱情と権力を有していると期待するのは虫が良すぎるだろう。
多くの場合は政権が完全に崩壊するだろう。そして無政府状態になった土地に近隣諸国が乗り出すのだが、日米の軍事力をもってすれば中国の強欲を牽制できる可能性は高い。そもそも無駄な出費を恐れて中国は手を出さないかもしれない。
残念ながらこのように目標の最終地点は偶発的・突発的な事件になるだろう。しかし遅かれ早かれその時期は来る。韓国にできることは自前で物資を備蓄し、併合プロジェクトの研究を進めることだけだ。それで間に合わない分は日米からの援助を頼みにするしかない。
できるならば北に暫定政府を建設して一時的な連邦政府を作ったほうが負担は小さいだろう。しかし、何ができて何ができないかはそのときその場にならないと分からないだろう。


さて、自国民の範疇には韓国内の朝鮮人しか含まない場合を考えてみよう。
このケースでは韓国の取りうる戦略は非常に幅が広いものになる。なにしろイスラムとの同盟などというアクロバットな戦略まで可能になるのだ。そのためここで挙げる事例は選択肢の一つにしか過ぎないということをあらかじめお断りしておく。
最初に問題になるのは国益の選定だ。北朝鮮統一を目的にした場合は、なにしろ北朝鮮地域に住む朝鮮人の境遇がひどすぎるために自国民の幸福がなによりも優先せざるを得なかったが、今回は自国民の物質的な幸福はすでに達成されている。そうなると自国民の自尊心を満足させることと国家理念の追求が焦点になってくる。
韓国の場合はすでに述べたように自国民の自尊心の充足と国家理念の追求はほぼ同義になる。そこでこの国家理念をもう少し掘り下げてみよう。
本当に達成するべきは「東アジアの中でリーダーと見なされる国になる」なのだが、日本と中国がいる限りまず不可能な目標だ。百年後にはどうなるか分からないが、基本的には政治は現在生存している国民のために行うものだ。せめて三十年以内に達成可能な目標にまで理想を下げるべきだろう。
本来ならばここで中間目標の理想を宣言するべきだが、韓国の大統領は「やっぱり無理だから当面の理想を下方修正します」などとは口が裂けても言えない。そんなことを言うと自国民の自尊心を大きく傷つけてしまうからだ。そこで百年後の理想には結びつかないかもしれないが、三十年以内に実現できそうな理想をでっちあげることになる。
「中国にも日本にも属さず、アジアの三つの極のひとつになる*25」が韓国の取りうる理念だろう。こういうでっちあげの理念は国家の正常な運営を阻害することが多いのだが、ここでは逆に(言葉上のすり替えはあるにせよ)非常に現実的な理念になっている。それもこれも最初の理念が非現実過ぎることが原因だろう。
次に採るべき戦略だが、これは虚栄心戦略になる。南北統一戦略はすでに放棄しているし、嫌いな日本と同盟しなければならない経済繁栄戦略も自国民の自尊心と相反するためにとりたくない。残るは虚栄心戦略だけしか残ってないのだ。
虚栄心戦略と言えば聞こえが悪いが(実際不道徳なことこの上ない)、国益と言うものがあくまでも非情なものだとしたら、必ずしも悪い選択ではない。人は自尊心なしでは長期間行き続けることは不可能な生き物だ。国家は国民の人生を預かっているのだから、でっちあげでもいいから、国民に人生を生き抜く力を与えなければならないのだ。
次に同盟国を選ぶのだが、中立戦略を選ぶのが無難だろう。中立戦略の最大の欠点は安全保障だが、中国と秘密条約*26を結んで安全保障を実現するのが一番実現可能性が高い。
もしも韓国が親日国家に生まれ変わることができるのなら、虚栄心戦略においても日米との同盟がベストの戦略である。しかし自国民の自尊心の一時的な大幅な後退を考慮すると、親日国家への移行は韓国の国益とは合致しないだろう。
この戦略を実行するために韓国は北朝鮮売渡しドクトリンを採用することになる。北朝鮮を中国の属国であると正式に認める代わりに中国と相互不可侵条約を結ぶのだ。このドクトリンは非常に不道徳なドクトリンなので、中国との条約は秘密条約にする必要があるのだ。
中国は喜んでこの条約を結ぶだろう。しかし腹の中では「韓国もそのうちに属国にしてやるぜ」と考えているだろうから、完全に安全が保障されているわけではないことは忘れてはならない。しかし最終的に中国の属国になったにせよ、それは昔に戻るだけで韓国の不幸ではないのかもしれない。むしろ韓国は属国よりも完全併合を望むかもしれない。同じよだれまみれになるのならば、よだれかけよりも唇になったほうが自尊心は傷つかなくてすむ。だがここでは、できるだけ属国化しないように戦略を策定することを考えよう。そのほうが併合よりも幸せなことは言うまでもない。
問題は北朝鮮がすんなりと中国の属国になるかどうかなのだが、僕は中韓の合意があれば蓋然性は非常に高いと考えている。
地上の楽園ドクトリンが崩壊した北朝鮮は、現在、テロ国家ドクトリンを実行している。しかしこのドクトリンもまた崩壊に瀕している。そこで北朝鮮が次に採用するだろうドクトリンは中国の属国化ドクトリンだろうと僕は考えている。金正日の中国への亡命を取引条件として、中国の影響が非常に強い政権を設立するのだ。日米はこの案に難色を示すだろうが、拉致被害者の返還と朝鮮半島の非核化*27というカードを提示されれば賛成する可能性は高い。本音を言えば、お荷物の北朝鮮を中国が引き取ってくれることにほっとするというところだ。ロシアにとってはメリットの少ない提案だが、今のロシアにとって北朝鮮戦略的価値はないも同然なので、少々ごねて見せるくらいが関の山だ。そして本来はこの提案に本腰をあげて反対するべき韓国とは秘密条約が結ばれている。
このドクトリンの最大の欠点は安全保障に不安があることだ。中国は条約締結の条件として在韓米軍の撤退と、韓国軍の大幅な削減を要求してくるだろう。この要求には「北朝鮮の経済的建て直しのために北朝鮮軍を大幅削減する必要がある。北朝鮮が無害化されるならば韓国軍も必要なくなる。この際、南北相互に軍縮をするべきだ」というもっともな理由がつけられる。
実際は北朝鮮軍が消滅したところで中国人民軍が進駐してくるだろうから、韓国の安全保障上の問題は一向に小さくはならない。むしろ(北朝鮮よりも)装備が優秀な中国人民軍は大きな脅威となるだろう。それを理解している日米は韓国の大幅軍縮に反対するだろうが、当の韓国が秘密条約に従って軍縮案を承諾すれば手の出しようがなくなる。
こういった韓国の迷走ぶりに日米はおおいに当惑するだろう。韓国の行動の前提となっている中国との条約が秘密なのだから迷走しているとしか見えないのだ。そして韓国との貿易制限を真剣に検討することになる。韓国が中国の機嫌をとるために行う反日キャンペーンの強化が日米のWTOドクトリンを刺激することが最初の引き金になる。
この経済上のデメリットを克服するためにも韓国は中国との貿易を強化し、中国の属国化政策が進展していく。次第に増していく中国の不当な圧力に韓国は恐怖を感じ始める。
ここで日米と和解すれば中国の軍事圧力を回避することはまだ可能である。実際、フィリピンが一度追い出した在比米軍を呼び戻すなどの先例もある。しかし反日感情のコントロールができない韓国には日米韓同盟の結成は非常に難しい。それができるなら最初から北朝鮮を売り渡さない戦略が採用できている。
起死回生の手段は核武装だ。核兵器さえあれば中国の圧力を大きく減じることができる。問題は日米中の圧力がかかる前に核実験を成功させることができるかどうかにかかっている。周到な計画さえあれば可能だろう。中国との秘密条約を結んだ時点でこのような展開になることは分かりきっているのだから、そのときに開発を開始すればいい。最近の新規核開発国と比べると韓国の工業力は遥かに高度で大きい。原料となる核物質さえ手配できれば苦もなくやり遂げるに違いない。
こうして韓国は「中国にも日本にも属さず、アジアの三つの極のひとつになる」という理念を達成することになるだろう。特に核武装は韓国国民の自尊心を大いに満足させるはずだ。核武装に伴う経済制裁は韓国国民の生活レベルを極端に低下させるだろうことは想像に難くない。しかし韓国国民が豊かな生活よりも自尊心を優先させるならばこの戦略を採用する動機は十分だ。
こうやって韓国の国家戦略をシミュレートしてみると、あまりに実際の韓国のとっている政策と酷似していることに驚かされる。もしかしたらすでに秘密条約は締結されているのではないだろうか。韓国が迷走しているように見えるが、実際は周到な計画に基いているのかもしれない。そんな妄想さえ浮かんでくるほどだ。日本人である僕は、そして韓国人と友好的な関係を築けたら素直にうれしいと感じる僕は、ただただこのような悪夢へと韓国が突進していかないことを願うばかりである。

*1:北朝鮮問題の他にもIMF事件やら竹島問題などいくつもある。

*2:最近のアメリカの不思議な行動は、イラク戦争開戦だろう。この事件だけは韓国の迷走ぶりに匹敵する。アメリカはイラク大量破壊兵器保有しており、その確実な証拠があるから開戦するのだと主張していた。しかし国連安保理パウエル国務長官(当時)が開示した証拠は情けないほどに貧弱なものだった。ちょうどテレビで中継映像を見ていた僕はこんな証拠ならまったく出さないほうがいいのではないかとあきれてしまった。

こういった外交(特に軍事)問題では機密情報というものが多数存在するため、説得力のある情報はテレビカメラの前で示すことができなかったのではないかと僕は信じた。各国首脳にはその秘密の証拠資料が開示されており、この安保理会議は茶番に過ぎないのだと。その証拠にあの貧弱な証拠資料を見たにも関らず、多くの国がアメリカの開戦を支持したではないか。

しかし戦争が進むにつれ情報が開示されていくと、どうやらパウエル国務長官がテレビの前で開陳したものがアメリカの持っていた情報のすべてであったらしい。ブッシュジュニアがお調子者で思慮が浅いことは知っていたが、それでもまさか世界の警察を自認するアメリカがそんな浅はかな真似をしでかすとは思わなかった。「せめてもう少し本物っぽい証拠を揃えましょうよ」と、誰も止める人はいなかったのだろうか。

*3:第二次大戦前、松岡外相があまりにも日独同盟を主張するので昭和天皇は「ヒットラーに買収されてるんじゃないか」と文句を言ったらしい。もしかしたら本当に買収されていたのかもしれない。

*4:このあたりの心理状態がよく分からない。日本人にとっては、地球の裏側に住んでいても日本人の血が混じっている人間は、そのほかの人間に比べて優先順位が高くなることは自明のことであるし、日本国籍を持っているならばなおさらである。しかし韓国にとって海外に住む朝鮮人(の大部分は日本に住んでいる)は韓国籍を持っていても北朝鮮人よりも異邦人だとして感じているようだ。どちらかというと、韓国に対する裏切り者と思っているのではないかというほどに公然と差別している。

*5:それを堂々と言うからフランスは世界中から困られながらも尊敬されるのだ。「そこにしびれる、あこがれる!(「ジョジョの奇妙な冒険荒木飛呂彦)」というやつだ。

*6:西洋が進出してくる前の華夷秩序が適用される地域。東南アジア・中央アジア・東アジア地域だが、日本は中国と対等の立場だと思っているし、多分中央アジアも同じように感じているだろう。モンゴルや満州は自分たちも「中華」の主役側だと思っているかもしれない。ベトナム(南越)やタイ(シャム)は中華は遠い世界の出来事と感じていたかもしれない。こう考えると、華夷秩序中華帝国朝鮮半島の間でしか固定的なものではなかったのかもしれない。

*7:朝鮮半島が統一した場合、韓国(朝鮮と呼ぶべきかもしれない)は日本に戦後賠償という名目で資金を要求してくるだろう。実際は日韓基本条約締結時に日本は北朝鮮地域の分の賠償金(戦争をしたわけではないので賠償も何もないものだが)を支払っているため、日本には支払い義務は存在しない。しかし人道目的も含め、朝鮮半島が経済的に発展することは日本の利益になるため、日本は多額(10兆円くらいが妥当だろうか?)の資金を有償や無償で投入することになるだろう。少なくとも僕は一人の有権者として日本政府にそういった援助を要求したい。

*8:同盟とは国家同士の結婚のようなものである。併合のように完全に運命共同体となるわけではないが、互いの友情・信義と尊敬がなければ成立し得ない。これらを抜きにした条約上の同盟は、危機になると簡単に見捨てられる危険が大きい。日米に比べると韓国の国力は小さく、その割りに戦争などの危険が非常に大きい。そういったハンデを含みながら同盟を結ぶためには、韓国が日米に対して心からの友情という支払いをする必要がある。

*9:在外米軍が事故を起こしたときに米軍が謝罪してくれるのは基本的に日本だけであるらしい。十年ほど前に米軍機がイタリアで事故を起こして二十数名のイタリア人が死亡したことがあったが、米軍は謝罪していない。人を殺してしまったときくらい謝れよ、米軍。先年、韓国で女子中学生を交通事故で殺してしまったときに米軍が謝罪したのは異例中の異例である。

*10:もちろん海上封鎖などは行われないが、日米が主軸となって行っている高度技術移転制限の対象国に認定されることは確実である。韓国経済は日本からの高度技術を利用した部品輸入に頼っているために、こういった制限は韓国経済の屋台骨を揺るがすことになる。この技術移転制限は中国の同盟国となった場合も実施されるだろう。

*11:日本ならば日英同盟という歴史があり、この時期には互いに誠実な同盟国として行動したという信頼関係があるために英連邦加入は不可能ではないだろう。実際、日本の英連邦加入を主張する政治学者も日本に存在する(英国に存在するかどうかは知らない)。日本の英連邦加入の大きな障害として、英連邦構成国家の元首は英国国王でなければならないことがあり、これは日本の元首である天皇の存在と矛盾(しかも天皇の格はローマ法王と並ぶかそれよりも上とされているため、さらに矛盾は広がる)する。ただし現在の英連邦では元首の規定は必ずしも加入の条件ではないためまったくの不可能な政策ではない。一番の障害は、日本は英連邦の加護が必要なほど弱小な国ではないという点にある。

*12:現在のASEANの影の盟主である日本が品行方正過ぎるので、韓国の行儀の悪さが目立ってしまっている。ベトナム戦争従軍の歴史があるベトナムや、反韓キャンペーンにまで発展したタイとの関係はかなり悪い。特にASEANの主要国家であるタイとの関係を改善しない限りは、ASEANの盟主にはなれないだろう。

*13:ASEAN内の対中感情は非常に悪いが、中国は軍事力と、その膨大な人口から発生する経済力とでASEANに多大な影響力を行使している。もし日本がなければ、中国は嫌われながらもASEANの盟主になっていただろう。また中国がなければ(そしてアメリカが横槍を入れなければ)必然的に日本がASEANの盟主になっていただろう。

*14:現代の地球上で非武装中立を実現している国家はそもそも存在しない。

*15:武装中立をなしえている国家は、地政学上、重要でない地域に位置している国家だけである。軍事政治パワーが集中している国家が非武装中立を宣言したことは何度もあるが、そのすべてが一方的に侵略されて滅亡の危機に瀕するか、途中で政策の変更を余儀なくされるかしている。近年でこのような地域で武装中立を実現した国の代表がオーストリアであるが、現在この国はNATOに加盟している。

*16:負け組を徹底的に叩くブロック経済ドクトリンが、窮鼠猫を噛む方式に戦争を誘発したという見方もできる。本来は喧嘩両成敗なのだ。まあ、戦争の原因は複雑なので一面的に見てはいけないということだ。

*17:冷戦ドクトリンが実施されていない隙を狙って、ソ連共産党軍閥を支援した結果、太平洋戦争の主目的であった中国市場を合衆国は失うことになった。朝鮮戦争はなんとか引き分けに持ち込んだが、ベトナム戦争では比較的行儀よく戦争した合衆国が敗北した。そのため合衆国は「行儀の悪い戦争」ドクトリンを採用し、ソ連の侵略を食い止めなければならなくなった。現在の合衆国の行儀の悪さの一因はソ連にあるのである。

*18:社会主義、というか全体主義のドクトリンの一つに「自由と豊富な資金が必要になる技術開発は他人に任せてしまおう」というものがあり、独自の技術開発はほとんど行われない。そのため冷戦ドクトリンが効果を発揮した。

*19:簿記(会計学)とは極論すればお金に名前をつけていく行為である。名前がつけられることによって因果関係が顕在し、経済行為の記録が正確になる。単式簿記ではたとえば、年度の終わりに現金が増えていてもそれが利益由来の現金か、借入金由来の現金かが分かりにくいなど因果関係を明確にできないことが多いため、私企業は複式簿記の使用を義務付けられている。それなのになぜか、政府関連は単式簿記を使うことが多い。

*20:侵攻先の至近距離に基地が必要だったのは戦闘機の航続距離が短かったためである。しかしジェット戦闘機の航続距離は非常に長くなり、必ずしも至近距離の基地は絶対条件ではなくなった。そしてそれよりも日本の防空力が強くなったため、遠かろうが近かろうが中露は空軍力を日本上空に展開することは不可能になったことが朝鮮半島上の基地建設の意義をなくしている。もしも中露が日本侵攻を企てたとしてもその主力は潜水艦によるシーレーン封鎖か弾道ミサイルによる直接攻撃になるだろう。そんな最高軍事機密の基地を自国外に設置することは中露のドクトリンには描かれていない。

*21:僕が個人的に知っている朝鮮人(数人)は特にこのような性癖を持っていたようには見えなかった(特に一番親しかった在日三世の金君は人の嫌がることを率先してやる、すばらしい人格者だった)。サンプル数が少なすぎるだけかもしれない。僕の父は仕事でよく韓国に行っているのだが、現実を直視できない人間が多いとぼやいていた。報道やネット情報によると父の経験のほうが一般的らしい。まあ、ここでは世界が韓国とどのように見ているかが問題なので、その性癖が真実かどうかは議論には影響しない。

*22:世界の極だからリーダーなのではなくて、リーダーだから世界の極になるのだ。これはアイドルの髪型や服装を真似たからといって自分がアイドルになれるわけじゃないということだ。アイドルと同じようにリーダーになるためにも多くの条件と努力が必要である。努力をしてもなれない場合もあるだろう。

*23:キプロス島におけるトルコ系住民とギリシャ系住民の間の感情がいい例である。もともと歴史的に仲がいいとはいえなかった両国はキプロス紛争で互いに大虐殺を繰り広げ、修復不可能としか思えないほど関係が悪化した。しかし現在は住民同士の感情も「昔は昔、今は今」と公に言えるほどにまで改善されている。(完全に修復されているわけでもないらしい)

*24:以前の品行方正ドクトリンを採用していたころの日本ならば金正日との宥和もありえたかもしれないし、日本がまた別のドクトリンに切り替えることもありえるだろう。しかし現行のWTOドクトリンの有効性を保つためには、悪に対して厳格に対処するという姿勢を貫かなければならない。

*25:正確な発言を心がけるならば「三番目の極」と言うべきだが、これも口が裂けても言えない。

*26:秘密条約は戦争の間接原因となることが非常に多いため、現在の国際法では禁止されている。

*27:中国からすればすぐ隣の自国領土内に核ミサイルを大量に持っているのだから、痛くも痒くもない提案である。