トリガー直接知財 情報の取引 その9

・収集・蓄積した情報から新しい情報を生産し、その情報を発信する


この種類の情報流通業者の代表は新聞などのマスコミだ。しかしこの流通業者には本当に多くの種類が存在し、マスコミだけを研究して情報流通業者を理解したと考えるべきではない。
・情報通の隣の奥さん
この奥さんの口にかかってしまえば、困ったことに非常に多くの個人情報が筒抜けになってしまう。しかしこの奥さんは自分の主観で悪者を規定してしまう癖があるので、その人物評を鵜呑みにすることはやめておいたほうが無難だろう。
・政府
政府の発言する内容も多くの嘘が含まれている可能性があり、鵜呑みにすることは危険だ。しかし、政府の発言内容は裏を取ることが可能かつ容易なものが多いので、言論の自由が大きく認められている国家の政府の発言はそれなりに信用が置けるものが多い。どうしても信用できないと感じるならば、別の情報流通業者(つまり野党)に取引先を変える(選挙で投票する)ことも検討するべきだ。多くの場合は完全に信用できる流通業者が現れることはないし、自分ひとりの考えだけで別の業者に取引変更できるわけでもないので、いつでも受信者は不満を抱えているだろう。
・北の政府
この不思議時空の政府の発言は何一つ文字通りの内容を信じることができない。しかしその発信内容をまったく無視するわけにもいかない。困ったものだ。そこで周辺諸国はこの政府の発言内容をチェックして、裏にどのような意味が隠されているかを探ることになる。つまり発信者が意図しない発信を利用するわけである。
この関係が高じてくると、北の政府は裏の意味を読み取ってほしいという意図で発信を始め、その隠されたメッセージを読み解くことで北の政府は周辺諸国を(あくまでも情報取引のプレイヤーとしてだけ)信用できるようになる。この奇妙な関係はいつしか情報取引に関してはある程度の信用状性関係が構築できるようになっているようだ。
・取引先の担当者
担当者は所属する会社の情報をまとめて、社外の人間に発信する役割を持っている。しかしどれだけ親密な担当者であろうとも、いつでも正しい情報をくれると考えることはいささか浅はかである。彼には彼の利害関係があり、彼の社内で彼に情報を発信する人間もまた独自の利害関係を持っている。また単にその担当者が思い違いで間違った情報を流すかもしれない。時々だまされたふりをしてやること、つまり発信者に多目の対価を支払ってやることが関係継続に役立つこともある。
・新聞社
新聞社が中立・公平な報道を行っていると信じるのは愚かな行為だ。世界中すべての新聞は偏向しており、収集した情報の自社の偏向方向に都合のいい部分だけを抜き出して*1記事を制作している。その偏向方向を理解したうえで記事を読まなければ世界で何が起きているかについて間違った判断をしてしまう。日本経済新聞だけを読むと経済活動こそが人間の本質ではないかと信じてしまうだろうし、地方新聞だけ読むと地方と国家・世界との距離感が狂ってくるだろう。


このように自律的な情報流通業者(以下、自律情報流通業者と称する)が発信する情報は、自動的な情報流通業者(以下、自動情報流通業者と称する)の発信(仲介)する情報と比較して信用度が低くなっている。大元の発信者が信用できないのに加えて、自律情報流通業者も信用できないからだ。
しかし信用醸成コストという不利を抱えながらも、自律情報流通業者の存在は受信者にとっての利益になる。自律情報流通業者は通常ならば受信者が行う多くの機能を代行してくれるからだ。
本来のトリガー直接知財は、受信した雑多な情報から受信者が意味を引き出し受信者内部に蓄積し状況に応じて使用する、という過程で利用される。それに対して自律情報流通業者を介した情報取引では、トリガー直接知財はそれを受信した自律情報流通業者の中で意味を引き出し蓄積されそして受信者の要求に従って再発信される。この流れの中で自律情報流通業者が代行している機能を見てみよう。
・情報流通量の圧縮
情報から引き出された意味のみが再発信されるために、自律情報流通業者が収集する情報量に比べて、受信者がそこから受信する情報量が格段に小さくてすむことだ。技術の発達により情報の受信能力は大きく向上しているが、世界から発信される情報の増大量は受信能力の向上を大きく上回っている。この一点だけを見ても、今後自律情報流通産業が大きく成長していくことが予想できる。
・情報の意味を引き出す
自律情報流通業者は独自の間接知財を用いて、雑多なトリガー直接知財からその意味を引き出している。受信者が独自にその間接知財を所有するコストを考えると、それを代行してくれることは非常にありがたいことだ。
・情報の蓄積
自律情報流通業者は普段から多くのトリガー直接知財を収集し、それが意味を持つまでその内部に蓄積している。そしてそれが意味を持ったときに、蓄積した情報も含めて発信が行われる。受信者の情報蓄積量に機能的・コスト的に制限があるため、蓄積を代行してくれることも非常にありがたい。
・大元の発信者への与信
大元の発信者の数は非常に多く、受信者がそれらすべてと信用醸成関係を構築することはほとんど不可能だ。自律情報流通業者の信用醸成能力が信用できるものならば、受信者は独自に大元の発信者と信用醸成関係を結ぶ必要がなくなる。
・情報の収集能力
量的な情報受信能力と発信者との信用醸成関係だけでなく、受信に必要なハード・ソフトへの投資も受信者が単独で行うことは難しい。必要な情報を所有している発信者の名簿・気象衛星・通信設備などである。また、北朝鮮の国家内部や取引先の会社の内情など、直接に受信者がアクセスできない情報を受信する能力は非常に貴重である。


逆に自律情報流通業者を利用するときのデメリットを見てみる。
・自律情報流通業者への与信
デメリットの大部分はこの問題に集約できる。自律情報流通業者が完全に信用できるのならば、情報の対価が法外なものでない限り、その業者を利用することに何の問題もないと言える。
しかしこの与信行為は非常に難しい。本格的な信用醸成を行おうとすると、大元の発信者から発信された情報を入手することや、大元の発信者との信用醸成を行わなければならなくなるからだ。それが困難だからその自律情報流通業者を使用するにも関らずだ。
大元の発信者へのアクセスができない状態で自律情報流通業者との信用醸成を行うためには、その業者から発信された情報が自分にとってどの程度の価値があるかという結果から帰納的に行わざるを得ない。しかしこれには長い時間と大きなコストが必要になる。その業者が信用ならないと判明するときは、多大な損失を被ったときが多いからだ。
次善の策はその自律情報流通業者の実績を調べることだ。その業者を利用した受信者から評価を聞いて、その評価を信じるしかなくなる。当然この情報取引の場面にも信用醸成が行われる必要がある。
・取引したい情報を扱っていない
必要な情報は主体によって異なり、その種類は無限である。せっかく信用できる自律情報流通業者があったとしても、そこから目的の情報を受信できるかどうかは、極端な話、運まかせである。
この場合、受信者は新たな信用できない流通業者を探すか、自分自身で直接発信者から情報を入手するしかなくなる。
・金銭的コストの増大
信用醸成コストや自律情報流通業者へ支払う情報の対価を考えると、受信者は直接発信者と取引したいと考えるかもしれない。
ただしこのコスト感覚は心理的限界費用と実際の費用との差異から生まれていることが多いので、注意が必要である。

*1:日本で高シェアを持っている新聞の中では、言わずと知れた朝日新聞が一番悪質だ。一般的な感覚ではありえないような部分だけを抜き出して重大事件のように報じたり、ひどいときにはマッチポンプを行って記事(というか事件)を捏造している。しかも読者がそれを指摘しても頬かむりするという確信犯だ。朝日新聞の捏造記事で最悪なものは「朝日新聞が日本のクオリティーペーパーである」だ。