ノウハウ直接知財

やったー!新章突入だ!


極端な言い方をすれば、ノウハウ直接知財は「蓄積されることを主目的としたトリガー直接知財」だ。また、蓄積されるだけが目的で行動のトリガーになることを想定していないノウハウ直接知財は娯楽直接知財と言ってもいい。結局、直接知財の効用面での分類は受信者の主観によらざるを得ない。そして情報は個別財であり、発信者も受信者も個別の自律機械なのだから、明確な分類などはできようはずもない。
だからと言ってまったく分類しないで議論を進めるのは今日の科学的方法からはずれているやり方だ。曖昧模糊とした世界のカオスをなんとなく区切るだけでしかないが、それでもそれなりに特徴は見えてくるだろう。


ノウハウ直接知財の構成
・行動を起こすためのアルゴリズム

やっぱり避難命令を例に挙げるのだが、人々が避難命令というトリガー直接知財を受信したときにそれを避難という行動のトリガーにするためには、「避難命令を受信したときには避難するべきだ」という知識を持っていなければならない。この知識、つまり間接知財を所有していない人は避難命令を聞いてもそれが何を意味しているのか分からず、避難することはできないだろう。
もちろん避難命令の多くは「(洪水などが)危険だから避難してください」と日本語で親切に説明しながら発信されることは多い。これはできるだけ受信者に自動機械として行動してもらおうという発信者の意図からきている。さらに避難場所も事細かに説明されることも多いだろう。それでも人間は自律機械だから、自律機械内部で避難命令を聞いたときの対処方法が、避難命令を聞いたときに自律的に作成されることになる。避難するかどうか、避難場所はどこにするべきか、今すぐ行くか、もう少し待つか、何を持っていくべきか。言われたとおりに行動できないことがあるのが自律機械の特徴だ。これはもちろん事前に自分で準備しておいた対処方法とも異なる可能性がある。
蓄積されたノウハウの通りに行動できないことがあるのは、行動を引き起こすトリガーが個別財であり、入力される可能性があるトリガーのすべてを事前に確定させることができないからだ。結局ほとんどの場合は、想定を少し外れたトリガー直接知財に対して自律機械内部で新しい行動様式を作成することになる。
ならばノウハウ直接知財は無意味なのだろうか。無意味だと言ってしまえれば楽なのだが、ノウハウ直接知財は実在するし、その恩恵を我々は日々被っている。毎日、真っ白の状態からすべての行動を作り出すなんていうことは、はっきり言って無理だし無駄だ。人間のとりうる行動は、なんらかの標準状態での行動様式が用意されているところに、自律機械ごとの不可思議なアレンジを加えたものでしかない。なにもないところにいきなり脈絡のないノウハウが発生して行動が起こせるほど人間は天才じゃない。


アルゴリズムの四要素
自律機械が行動を決定するためには、目的(結果)・トリガー・行動・因果関係の四つの情報が事前にインストールされている必要がある。もちろん何度も書いていることだが、自律機械にとってはこれらの事前情報に少しくらいのずれは許容される。それどころか上記の要素のうちのいくつかが欠けていてもかまわない。
たとえば「1+1=2」というノウハウ直接知財は、トリガー(1+1)と行動(=2と答える)の二つの要素しかないが、立派なノウハウだ。ちなみに目的も因果関係もなしに直接トリガーと行動が結びつくときは自動機械としての動作しか行うことはできない。(でも自律機械なので間違った答えを答えてしまう可能性がある)
また別の視点からは、このノウハウは因果関係としての要素であると見ることもできる。カップルで遊園地に来たとき(トリガー)、遊園地に入るために(目的)、入場券を2枚買う(行動)のは、一人1枚の入場券が必要で1+1=2だからだ(因果関係)。
ノウハウの要素が増えれば増えるほど、ノウハウ直接知財の受信・蓄積にはより複雑な心的能力が必要になる。もちろん、複雑であるから困難であるとは限らない。「避難命令を聞いたら(トリガー)、その場にいると危ないということなので(因果関係)、危険でない状態にするために(目的)、避難をする(行動)」というノウハウ直接知財に比べて、「このブログの文章を丸暗記する(行動)」というノウハウ直接知財のほうが単純ではあるがはるかに困難だ。


・間接知財
まだ僕の中で間接知財というものの概念が確かなものになっていないために、この部分は後々書き換えることになるかもしれない。
ノウハウ直接知財は間接知財の形で主体内に蓄積することができる。いや、間接知財化しないと、そのノウハウをもってして自律機械的行動をとることはできない。そして多くの場合は、間接知財化したほうが情報がコンパクトになるために記憶しやすくなり、記憶できる量も増える。(特殊な訓練を受けた人やサヴァン症候群の人では直接知財のままで大量の情報を容易に記憶することができる)
「1+1=2」というノウハウ直接知財も「足し算の方法」という間接知財を使わなければ、すべての数字の組み合わせでの足し算の数式を覚えなければならない。しかし、一桁の足し算や掛け算は逆に、直接知財のままで蓄積したほうが便利である。そうしなければどんな計算も指折り数えなければできなくなってしまうだろう。